2008年03月03日

あらためてボストン公共図書館をまじまじと見て廻ったりしてみた

 ボストン公共図書館といえば、アメリカ公共図書館史に燦然と輝く、市民の図書館の先駆りとして、言わずと知れた存在なわけなんだけども、というところまで書いて、ふと、あれ、もしかしてこれを”言わずと知れた存在”とまでほんとにゆっちゃっていいんだろうか、そこまで言い切れるのってひょっとして、江上をはじめ京大で司書課程をとった人らだけなんじゃなかろうか、みたいに、この仕事に就いて10年も経ってはじめて不安に陥ったりしたのだけど、まあ、それは置いとこう(笑)。
 それで、4年前にはじめてボストンに来たときも、そんな気概でもって見学に来てみて、なんとなく、あれ〜、こんななの〜、ちょっとがっかり、ていう、札幌の時計台かコペンハーゲンの人魚姫かっていう、なんかこう、日本のイケてない地方の県立図書館っぽい感じじゃなかろうかっていう、そんな感想を抱いてしまってたことがあったんだけど、そのときはまだ海外の図書館を見るというのもそれほどたくさんの経験があったわけではないので、現在の自分の目で見てどうかな、ていうノリで行ってみたのですけど、えっと、結論から言えばさして変わらず、かなりイケてない地方の県立図書館、ていうか、これもまた「王様のレストラン」第1回のようなあれだったんだけども、でもその中でも、あれ、なんかこの部屋だけは「王様のレストラン」のサミット回だかびっくりムース回だかのにおいがするぞ、というのもあったりして、気分の上がり下がりの激しいジェットコースター図書館でしたよ。(←なんだこれ(笑))

20080228-0302_11.JPG

・日曜に行ったら、13時からしか開いてなかった。orz
・ボストン公共図書館を新館(近代建築)と旧館(大理石建築)とでわけて、まず新館の1階から。
・新館1階はフィクション・ノンフィクションのポピュラー的な本のふつーの閲覧室で、案内カウンターなりがある。
・端末はあるけど、基本OPACとe-resourceだけ。e-resourceは契約もので、JSTORやNetLibraryをはじめいろいろ。たぶん館外からでもカードを持ってる人はアクセスできるんだろうと思われるよ。ちなみに、それを使ってアクセスするのかどうかはわかんないけれども、カードの新規申込み用紙にはパスワードを書き込む欄がちゃんと用意されてるし。ところで、そのe-resource案内画面に「ArticleLinker」へのリンクみたいのがあったんだけど、あれはどういうことだったんだろう。
・新館メゾネット階は、多言語、ヤングアダルトで、日本語の本もあるけど、基本、地元の人による無造作な寄贈によると思われる品揃えで、それだけに、もはやこんなもの日本で入手しようったってひと苦労なんじゃなかろうかというような古い本がずらりと並んでいるよ。
・2階は、ポピュラーじゃない各分野の蔵書がLC分類順に並ぶというフロアなんだけど、ここがもうひどかった。紙くずがちらばってるとか、机やイスが乱れてるとか、読み終わりの本が机のあちこちに無造作に放置されてる、だけならまだしも、本が書架の下とか通路とかにばらばらと散らばって落ちてるのには参ったよ。ニューヨークの路上かここは、と。これはもはや、落ちてるじゃなくて、堕ちてるだろう、と。しかもそれらが、スタッフによってこれから片付けられようとしている気配もないし。お客はそれなりにいて、ここまで来ている人はさすがに本を読むのを目的で来てる人たちがほとんどみたいだから、そういう意味では”使われている図書館”だろうと、先日懐疑的に見てきたハーバードの教育図書館や医学図書館に比べてそのへんはまだ”図書館”として使われてる気はするんだけど、それにしたって、このやさぐれた環境はいかがなものか、と。いう感じでしたよ。(註:よくよく見ると、書架下の本はところどころブックエンドで並べられてるところもあったりするので、え、棚がわり?)
・新館2階から旧館2階へ移ってみたよ。そこには、インターネットにアクセスできる端末が並んでるPCルームがあったんだけど、60分制限の端末60台が満席で、何人かが立って待ってる状態。この部屋にはその端末使用を予約する端末も別途用意されていて、そこでセルフで申し込むらしいよ。たぶんここでも先のパスワードとかを使うのだね。ちなみに別の部屋には16台の15分制限端末もあるよ。
・さて、4年前に来たときっていうのは、このPCルームにはたしか冊子体のレファレンスブックがずらりと並んでたような気がするんだけど、それがじゃあPC端末に取って代られましたよ、ていうくらいだったらまだいいほうで、とある部屋なんか、いまやPC端末すら置いてない”なんでもない部屋”になっていて、壁一面に作り付けられた書架はからっぽで、机とイスが乱雑に置かれていて、読み終わりの本やDVDがぽおんと放置されていて、所在なさげな人々がだらしなく座ってはぼーっとしてるといった有り様で、これほどまでに心の荒む図書館がいまだかつてあったろうか、という光景だったよ。
・で、その先にあったGeneral ReferenceやSocial Science Referenceのリーディングルームにたどりついて、天井の高い横長の大理石部屋なんだけど、ここではじめて、やっとほっとする。ああ、図書館に来たな、という光景が見える。その光景というのは、書架もイス机も整然と並んでいて、掃除がふつーにされてて、お客はそれほど多くはないけど、それなりにいて、人によっては蔵書を使ってたり、紙資料を使ってたり、また人によっては自分の持ち込みノートだったり、ラップトップPCだったり、それぞれの方法でまじまじと勉強中でおられる、ていう。ああ、これだなあ。すごくほっとする光景だなあ、と、荒んだ心がふぅっとやわらぐよ。
・そのまま旧館3階へ上がり、前回訪問時は工事中だった階段と天井画の間を通り抜け、展示ギャラリー通り抜け、壊れた展示ケースのからっぽのが無造作に放置されてる物置のような通路を抜けて、Fine Artのレファレンスルームに来て見たら、これがひどかった。ひどいっていうか、一周まわって逆に見事だった。芸術分野だけあって、資料を貸出もしないし、この部屋以外に持ち出しもさせないというこのレファレンスルームでは、ケータイを使ってはいけないのはもちろん、プラグに勝手に手持ちのPCをつなげたりしてもダメで、資料が必要ならカード目録を引いてください、と。あとなんだかわからないいろんあカード式インデクスがあって、Song Indexとか、Organのある場所とメーカーのIndexとか、そんなんののカードケースの上に、そのカードの検索方法をちょろちょろっと書いた紙が置いてるんだけど、日に焼けてぼろぼろになってしまっているよ。しかも、空調の加減がどうおかしいのかわかんないけど、めちゃめちゃ暑くて、冬のボストンで、窓を全開に開け放して、扇風機をガンガン回してる、という感じだった。もちろん、お客なんて一人もいなかった。すごいな、と思った。ここは、なんの手も付けられずに、ずっと何年もこのままでいたんだろうし、せっかくだからこれからもこのままでいてほしいな、と思った。ていうか、ちょっと前の図書館ってどこもだいたいこうやったよなあ、と、ちょっと懐かしい気持ちにすらなってしまった(笑)。
・この旧館の1階へ降りてみると、手狭な部屋があって、そこはマイクロフィルムのルームだったのだけど、ここがまた、先ほどの芸術系レファレンスルームとはうってかわって、”図書館”として実にあらまほしき光景を見ることができてすこぶる安心した感じだった。そんなにたくさんのお客がいるわけじゃないんだけど、若い人や年輩の人がそれぞれでマイクロフィルムリーダに向かって、熱心に調べ物をしている、とか、カード式インデクスや冊子体インデクスやPC端末に向かって懸命にものを探してるとか、カウンターではライブラリアンと利用者とが熱心にディスカッションしていたりとかして、もう一目見て、ああ、使われてる図書館だなあ、ということがすぐにわかる。たぶん、面積・対・熱量、でいえば館内で一番使われてるエリアだと、”図書館”として使われてるエリアだなという印象を受けるよ。そして、この部屋へ来て江上ははじめて、そこのライブラリアンの人に”何か探してますか?”と声をかけられたよ。かのシアトル公共図書館では、もうちょっと鬱陶しささえ感じるくらいに、たくさんのライブラリアンからひっきりなしに声をかけられたのだけど、ここボストン公共図書館ではこのマイクロフィルムのルームでだけだったよ。

 という感じでした。

 自分の勝手な直感でしかないんだけども、それでも、”図書館”らしい光景だなあ、と思った理由は何かについて、ちょっと覚えておくことにしたいと思うよ。

 あ、あと、カフェとかないです。
 あるけど併設レストラン的なやつで、ぱっと見だいぶハイソで、現在で言うところの”図書館カフェ”ではない。で、日曜は開いてない。

posted by egamihvu at 13:36| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
中庭にカフェあったと思うよ。
おなかが減っていたのでしかたなくなんかを
テイクアウトで食べたら平均的にまずくて、
隣でハバド・ロースクール(たぶん)の
日本人学生が勉強してて、
2階の一室の暗がりではInternet archiveの
「自動読書機」ががーーっと並んで
ごーーっと読み取ってて
(そんな気分がしただけかもしれないけど)
それが私のボストン図書館の印象。

奥深いよね・・
Posted by HL at 2008年03月03日 23:42
ああ、じゃあそれは、夏季限定だねえ。
Posted by egami at 2008年03月06日 11:01
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。