2008年02月19日

Ohio State UniversityのCartoon Research Libraryについてご報告します。

 某下書きの次に、補遺(生メモ)。

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【日本のマンガを保存する図書館 -- Cartoon Research Library, Ohio State University】

 オハイオ州・コロンバスにあるオハイオ州立大学には、Cartoon Research Libraryという、マンガ資料専門の研究図書館があります。1977年、漫画家ミルトン・カニフのコレクションを受け継ぐ形で設立されました。マンガ(Cartoon)資料の包括的な研究用コレクションの構築を目的とし、25万点のマンガ原画、4万冊の図書、5万タイトルの雑誌・逐次刊行物、250万点の新聞コミック等の切抜きが保存されています。そのすべてがレアブックとして取り扱われており、事前予約による閲覧のみが可能となっています。
 そして、このコレクションの図書資料約4万冊のうち、約1万冊が日本のマンガ及びその関連図書だそうです。
 日本のマンガ資料の選書・収集及び研究を行なっているのが、当大学の日本語コレクション専門ライブラリアンであり、Assistant Professorでもある、Maureen Donovanさんです。

 Manga blog, Ohio State University Libraries
 http://library.osu.edu/blogs/manga

 1995年、サバティカルで東京滞在中だったDonovanさんは、日本におけるマンガ文化の充実ぶりを体験し、いまのうちにマンガ資料の体系的なコレクション構築を始めておかなければならない、との思いを強くしたそうです。帰国後、Cartoon Research Libraryのライブラリアンと相談し、日本マンガコレクションの体系的・継続的な構築の開始が決定されました。
 資料購入のため、国際交流基金など各所からの資金援助を得たり、整理のため専門のカタロガーを雇用するなど、さまざまな努力が続けられてきました。現在では、このCartoon Research Libraryの利用者の多くが日本マンガ資料を目的としており、日本からの利用者も少なくないとのことです。
 このコレクションの特徴のひとつは、特定の作者・分野の資料を集中的・網羅的に収集すると言うわけではなく、日本におけるマンガの歴史・文化全体を概観できるよう、広範囲にわたる資料収集が行なわれている、という点です。ある作家の作品がすべて購入されているとか、ある雑誌が初号からすべてそろえられているという例はあまり多くありません。そのかわりに、歴史マンガ・政治マンガなどのさまざまなジャンルのマンガ、マンガによる社史・辞典・受験参考書、マンガの描き方を指南した本、同人評論誌や記念出版物、さらにはマンガの描かれた双六や子供用グッズ、映画化記念冊子に至るまで、日本の社会においてマンガがどのように浸透しているかを広く見渡すことができるコレクションになっています。どの本屋でも売っているような最近の単行本もあれば、「時事漫画」のような戦前・戦中の出版物や、原画・手稿資料のような非常に貴重な資料もあり、その幅広さには驚くばかりです。

 日本のマンガを収集することの難しさのひとつは、絶版になりやすい、という点だそうです。マンガそのものだけでなく、その関連書籍や参考図書となるような本も、刊行後すぐに品切れになってしまい、そのまま入手不可能となってしまう例が少なくないそうです。ISBNの付与されない出版物や限定・記念出版物が多いことも、その一因のようです。
最近ではインターネットで探し当てることができたものも少なくないようですが、古書店やネット書店では海外に送ってもらえなかったり、支払方法が非常に限定的であったりといったことが問題になってしまいます。300円程度の本が、代理店を通したり、送料を負担したり、支払い手数料がかかったりして2000円近くにまでなってしまうこともある、とのことでした。支払方法が限定的であるために購入できない、あるいは割高になるというのは、日本語資料を扱う海外の図書館では大きな問題であるようです。
 また、マンガの選書・蔵書構築のための参考図書やツールが整備されていないことも、資料収集を難しくしているとのことでした。Donovanさん自身、まずその参考図書の収集やマンガのビブリオグラフィー(書誌学)の研究からスタートしたそうです。マンガについての研究目的の参考図書は、学術的過ぎて実用に即していない。実用できそうなマンガ特集のムック本などは、すぐに絶版になって入手困難になる。そもそも、マンガ雑誌の収録作品や記事を検索できるようなインデクスやデータベースが整備されていない、などの問題があるようです。

 コレクションの構築に伴い、その目録の作成が問題となります。オハイオ州立大学では、OSCARと呼ばれるOPACで「manga collection」というキーワードで一括して検索することが可能です。
 また、日本のマンガをカタロギングするための独自のガイドラインが作成されており、オハイオ州立大学の特殊コレクション目録部署のホームページに掲載されています。これは大学のカタロガー、マンガの目録を担当していた実務者、Donovanさんらの共同作業によるもので、改訂を繰り返して現在に至っているそうです。日本のマンガに特有の出版事情や形態、それに伴う書誌記述についての解説が含まれています。
 この日本マンガについての書誌レコードには、「Summary」と「Genre Terms」が記述されています。「Summary」は作品のストーリーなどをおおまかに英訳したもので、例えば以下のようなことが書かれています。

”A story about a wizard who works for the imperial court during the Heian period in Japan. He solves weird problems by using his magical knowledge based on the Ying yang cult.”

 また、「Genre Terms」は、日本のマンガに固有のジャンルを表す「Genre Terms」リストから、ひとつまたは複数を選んで記述するというものです。非常に多くの、かつ多岐にわたる用語がリストアップされています。LCの件名標目も併用するため、実際の書誌には以下のような記述がされることになります。

Oda, Nobunaga, 1534-1482 -- Comic books, strips, etc.
Generals -- Japan -- Biography.
Historical manga.
War manga.
Samurai and ninja manga.

 日本人は必ず何かしらのマンガを読んだ経験があるため、どんなマンガであるか、どんなジャンルであるか、読者層は誰かなどがすぐに把握できる。しかしアメリカ人にはそれができないため、こういったSummaryやGenreの記述が欠かせない、とのことでした。

 Donovanさんは、Assistant Professorとして日本のマンガについての授業も担当しておられます。これは主に学部1年生を対象とし、毎回特定のマンガ作品について互いにディスカッションしあう、というものです。この授業を通して、学生通しが交流を深めたり情報交換のコミュニティを築いたりという効用があるそうです。Donovanさん自身、日本からの情報をまったくタイムラグなしに入手してくる学生たちに大いに刺激され、多くの有用な情報を得ている、とのことでした。
 そんなDonovanさんが危惧しているのは、ほとんどの日本の大学図書館・研究図書館がマンガを蔵書構築の中に有効に組み込んでいない、という点です。先述のようにマンガやその関連書籍はすぐに絶版になることが多い。一方、マンガを原典や資料として活用するように世代は今後増えつづけるはずである。日本でも保存・収集の取り組みが必要なのではないか、とのご意見でした。

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●日本のマンガ
・<1@>レアブック扱いである。バーコードは直接貼らずに、スリットを挟む。カバー・帯を保存。ビニールカバーをつける。
・<1@>日本マンガ蔵書のうち、半分ほどはすでに保存書庫(キャンパス内のわりとすぐ近く、少なくともAckerman図書館より近く)で収蔵。
書庫エリアの全体の1/5くらいを日本語資料で占めている感じ。
・<1@>包括的、網羅的でなく、特定の作者や分野を集中的にでもなく、日本におけるマンガの歴史・あり方が概観できるように、broadly representiveに、セレクティブに、オーバービュー的にコレクション構築している。
・<1nb>教育漫画、伝記漫画、歴史漫画、文学漫画、政治漫画。[*01]
・<1@>マンガことわざ辞典。マンガ新撰組列伝。
・<1@>大阪府立北野高校の校史。←手塚治虫
・<1@>評論同人誌。「漫画百年」(東京漫画スケッチ会)、NDLにもWebCatにも所蔵が見つからない、同人評論誌。
・<1@>戦中の、主婦用節約漫画(「思ひつき夫人」)
・<1@>鉄腕アトム・ハッピーバースデーボックス、金田一少年の探偵手帳グッズ。
・<1@>漫画双六。戦前のものや、あさりちゃんのものまで。
・<1@>漫画の描き方に関する資料がたくさんある。戦前のものから、最近のもの、英語のものまで。
・<1@>赤本マンガ
・<1@>「僕は妹に恋をする」と、その映画化記念ブック。
・<1@>英語で出版された、図録、紹介本、ハウツー本。
・<1@>マンガ日本の歴史。
・<1@>「日本のマンガ家カタログ」など、非売品記念出版物。
・<1@>1924年「日本漫画史」細木原青起(おそらく初の漫画史)
・<1@>漫画の秘密本。「消えたマンガ家」「マンガ夜話」
・<1@>二年の学習夏の特集号。小学一年生や二年生をある年代の分だけ。りぼん1982年1月号お正月特大号のみ。
・<1@>ゴーマニズムパーティー
・<1@>手塚治虫全集。
・<1@>マンガ大学入試明解小論文
・<1@>マンガで描かれた社史
・<1@>マンガ北海道弁
・<1@>しりあがり寿。
・<1@>時事漫画の原本。

・<1@>マンガやその関連書籍は、絶版になりやすい。新刊書でも、刊行後しばらくしたら手に入らなくなることもしばしばある。
・<1@>購入に当たって、代理店を通し、送料を負担し、支払い手数料が加わることで、1000円増しになったり、300円が2000円になることもある。
・<1@>日本業者には、クレジットカード支払いやPaypalなどのWebマネー支払いをもっと広く受け付けるようにしてもらいたい。
・<1@>Donovanさんから見て、日本の大学図書館・研究図書館がマンガを蔵書構築の中に組み込んでいない現状を、危惧している。マンガやその関連書籍はすぐに絶版になることが多い。それを資料として活用するように世代がすぐに増えるはずである。

●"Analyzing the Appeal of Manga"(講義)
・<1nb>2006年冬、1単位、週1回48分。助教授としてのDonovanさんの講義。[HP]
・<1nb>「アニメ化されたものではなくて、冊子のマンガを読むこと」[HP]
・<1@>マジ授業というよりも、ソーシャル活動的なもの。新入生対象。日本マンガについて思いっきり語れる仲間を見つけることができる。この授業をスタートとしてコミュニティを構築することができる。情報交換の場を持つことができる。
・<1@>学生は、日本語が一切わからない学生であっても、日本でのマンガの発売当日、アニメ・テレビ番組の放映当日には、もうすでにその概要を知っている。という意味では、タイムラグは一切ない。インターネットを介しての情報入手が非常にリアルタイムであり、かつ非常に貪欲である。

●目録・検索
・<1nb>OSCARで「manga collection」で検索することで、マンガ蔵書が検索できる。[*01]
・<1nb>OSCAR書誌中では「Forms part of the manga collection」と記されている。[HP]
・<1@>日本人は「マンガなんて読まない」という人でも、必ず何かしらのマンガを読んだ経験が豊富にある。このため、日本人にはぱっと見ですぐに何のマンガであるか、どんなジャンルであるか、対象は、などが把握できる。しかし、アメリカ人にはそれができないため、サマリーが絶対に欠かせない。
・<1nb>Ohio State University LibrariesのSpecial Collections Cataloging Departmentで、Cartoon Research libraryのComic、Manga用の目録ガイドラインが策定されている。[HP]
・<1nb>「CGA/EAS MANGA Cataloging Project, Cataloging Manuak」(200302)[HP]
・<1nb>要件
-雑誌・単行本・複数巻単行本で取り扱いを分類している。マニュアルでそれぞれの特徴を解説。
-コピーカタロギングの要件など、実務用の解説。
-Authorの役割表記。共著の取り扱い(CLAMPはどうするか、など)
-文庫、四六判、菊判などの日本出版用語を注記する。
-短編集の内容著作
-サマリー
520Three schoolboys save Tokyo from destruction by space aliens.
520 Contains stories about a father and son who devoted their lives to reforestation of desert lands and a family who pioneered rearing guidedogs in Japan.
-ジャンル用語:付録の用語リストからひとつ以上を選んでつける。LC件名も併用。
600 10 Oda, Nobunaga, 1534-1482 |v Comic books, strips, etc.
650 0 Generals |zJapan |vBiography.
655 7 Historical manga.
655 7 War manga.
655 7 Samurai and ninja manga.
-793に「Manga Collection」と入力する。

・<1@>学生バイトさん1人、専用作業席あり。
・<1@>アカデミックな参考図書は得てして学術的過ぎて例えばサンプル画がないなど使いづらいことがある。別冊宝島のマンガ特集のようなものが有益であったりするが、すぐに絶版になって入手困難になってしまったりする。
・<1@>インデクスの類が足りてない。雑誌記事索引や大宅であっても、マンガ雑誌のインデクスは作成されていないし、マイナーな雑誌のインデクスも作成されていない。。
・<1@>このオフィス内に小さな簡易スタジオもあって、自前で、資料の撮影とデジタル化を行なっている。4方向ライトとオーバーヘッドカメラと、デジタル処理端末とがある。
posted by egamihvu at 11:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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