2007年11月15日

"Learning Commons"ってなんですか?



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(第20回)日記下書き

 11月7日・8日、Amherstという街にあるUniversity of Massachusetts Amherstを訪れ、図書館の見学や日本語クラスへの参加などをさせていただきました。
 Amherstは、ボストンから西へ約100キロ、University of Massachusetts Amherst(以下、UMass Amherst)、Amherst Collegeなど5つの大学が集まる、比較的小さな大学街です。
 州立大学であり、この街ではもっとも最大規模であるUMass Amherstは、学部学生約2万人、院生約2000人、教員約1000人。その広大なキャンパスのほぼ中心にあるのが、地上28階建てのW.E.B. Du Bois Libraryです。

 (外観写真)

 University of Massachusetts Amherst
 (URL)
 W.E.B. Du Bois Library
 (URL)

 このUMass Amherstの図書館について話題になっているのが、近年新しくオープンしたLearning Commonsという施設です。これは、従来の図書館閲覧室・閲覧席のようにただ机といすのあるスペースだけを与えるのではなく、「そこにいるだけで学習活動のほとんどをまっとうできる場所」の提供を目的として設けられたものです。図書館とテクノロジーとキャンパス・サービスを融合させること。学生の日常的な学習・共同活動・コミュニケーションを環境としてサポートすることなどが、方針として掲げられています。その施設・サービスの充実ぶりと成功の様子は、日本でも注目されています。

 Learning Commons
 (URL)
 九大記事
 (URL)
 CA-R記事
 (URL)

 図書館はこのLearning Commonsも含めて平日24時間開館しており、学生はいつでも好きなだけここに滞在することができます。学生の多くはキャンパス内の寮で生活しているので(1年生は入寮が義務)、朝晩を問わず利用できるこの施設はたいへん評判が良いようです。実際に私が訪れてみたときも、午後7時頃でほぼ満席、朝8時頃でもそれなりの数の学生が勉強に励んでいました。
 図書館の地階全体、面積約25000平方フィートのエリア内に、テーブル・一人席・グループ学習室・ソファなど、総計5-600人分ほどの席が用意されています。学習席のほとんどには計200台のデスクトップPCが備え付けられています。館内には無線LANが設けられていますので、持参したラップトップPCや貸出用ラップトップPCを、思い思いの場所で使うこともできます。ソファやいすにはキャスターがついていて、学生が自分たちの使いやすいように席をアレンジできる、という配慮もされていました。また、17あるグループ学習室は声が漏れないようにガラスで囲われ、壁付のホワイドボードも用意されていて、ディスカッションには最適の場所です。とはいっても、もともとここでは”静かにすること”はそれほど求められておらず、むしろグループ学習・共同作業ができることを前提とした場所ですので、学生同士のおしゃべり・ディスカッションは当たり前のように行なわれています。
 エリア内にはその他にも、コピー機、プリンター、FAX、デジタル・スキャナなどがあります。自動販売機では、飲み物・食べ物・スナックのほか、ノートやCD-Rといった文具・小物類を買うこともできます。1階にはカフェもあり、Learning Commonsへ持ち込んでの飲食も自由です。ケータイでのおしゃべりはエレベーターホールのほか、cell phone boothというケータイ専用の小部屋で、と決められています。
 なお、PCやソファなどのほとんどは、寄付金を募ることによってまかなわれたものであるとのことです。

 さらに注目すべきは、ライブラリアンや学生スタッフらによる学習支援サービスです。Learning Commons内にはいくつかのサービスデスクやセンターがあり、学部学生の学習をそれぞれの方法でサポートしています。
 例えば、「Writing Center」が行なうWriting Supportは、学生のレポート・作文・論文などの執筆についてサポートしてくれるサービスです。このセンターには充分なトレーニングを受けた院生・学部生スタッフがいて、レポートなどの課題を抱えた学生に対し、文章の構成方法や読みやすさ・文体・文法などについて、相談にのったり個人レッスンをしたりといった形で手助けをしてくれます。「Writing Center」は、そもそも図書館とは異なる学内部署による教育プログラムであり、かつては学生会館に居を構えていたのですが、このLearning Commonsの設置を機に館内でサービスを行なうことになったそうです。
 「Career Services」は学内のCareer Services部署が設けた出張デスクで、就職情報の提供、個別相談、インターンシップやワークショップのコーディネイト、模擬面接やレジュメ作成の指導などを行ないます。また、「Academic Advising」も同じく学内の学生サービス部署が設けた出張デスクです。どちらもLearning Commonsの設置を機に、学生会館から館内にデスクを移転させました。
 なお、Learning Commonsとは別ですが、図書館10階には「Learning Resource Center」があり、特に学部1-2年生の学習指導を行なっています。ノートのとり方、学習の進め方などの基本的なスキル習得についてのサポートのほか、必要に応じて補習を行なったりもしています。
 ライブラリアンが詰めているのは、「Learning Commons and Technical Support Desk」と「Reference & Research Assistance」です。前者は3交代制のライブラリアンと学生スタッフが常時待機して、総合的なサービス・管理を行なっています。後者のほうでは、レファレンス・ライブラリアンが深夜まで学習・研究のサポートを行なっています。PCコーナーに隣接していて、何人かの学生が気軽に相談を持ちかけていました。個別相談に応じることができる小部屋も設けられています。

 この図書館を利用している学生に、実際に感想を聞くことができました。
 「寮の部屋や自宅より集中できる」「プリンタなど、自分の持っていない機器を利用できる」など、評判は良さそうでした。実際の利用を見てみると、Microsoft Officeでレポートやプレゼン資料を作成していたり、2-3人で話をしながら何かをしていたり、スキャナを利用したりと、従来の図書館閲覧室とは一歩違った活用がされているようです。統計によれば、当初の予想に反して、早朝でもそれなりの数の学生が来館利用している、という話も聞きました。
 ただ、学生の声でいくつか気になった点があります。ひとつは「人が多くて落ち着かない」というものでした。これについては、館内に「Quiet Study Area」が2箇所設けられています。Learning Commonsは確かに成功した施設かもしれませんが、それひとつあれば事足りる、という短絡的な考え方ではなく、学生の多様なニーズに合わせた柔軟な姿勢が不可欠なのではないかと思います。
 もうひとつは「Learning Commonsでグループ学習などをしていても、参考図書などの本が必要になって、結局はその本がある閲覧室へ移動する」というものでした。Learning Commonsのある場所はもともと参考図書やマイクロフィルムが置かれていたエリアであり、その多くを書庫などにしまいこむことで捻出されたスペースです。が、それでもなお基礎的な参考図書はいまでも相当数がLearning Commons内に配架されています。PCに向かって検索したりレポートを書いたりしている学生たちの傍らには、分厚い本やテキストブック、プリント類が並べられていました。検索ツールの多くがオンライン化しつつあるとはいえ、授業の課題として図書にあたることを課題として与えられることもまだまだ多いのだと思います。席やPCだけでなく、書架に並ぶ図書へも24時間アクセス可能であることが、この図書館の強みであるように見えました。
 この施設の名前は、”Information Commons”でも”Learning Space”でもなく、”Learning Commons”です。ネットで情報を収集し、PCで編集すること。本にあたって知識を獲得すること。そして、人と人とがコミュニケーション・ディスカッションで刺激を与え合い、教え教わること。どの要素が欠けても”Learning Commons”とは呼べないのではないかと思います。


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 拾遺ネタ。

 (利用)

・規則で「フードのデリバリーは館外で受け取りなさい」ていうことは、注文して持ち込むのはありなんだね、ていう。
・ケータイブースで男女の不適切利用の例があった。
・15分離籍していたら、荷物をどけて席を片付けることがある。
・グループ学習室を1人使用することも可能だが、後からグループが利用を希望したら、デスクのスタッフがその1人にどいてもらうようになっている。
・騒がしいなどの迷惑行為については、ロビーの内線電話から図書館スタッフに報告できるようになっている。
・館内の閲覧用スペースは26階まですべて24時間使えるようになっている。ただ、夜になると上階は人が少なくなってしまい、危ないので、学生もなるべく行かないようにしている。
・エスコートサービスが午後7時から午前2時まで。

 (設備)

・文具自販機:USBメモリ、電卓、イヤホン、ペン、デジタルビデオテープ、ノート、ノートパッド、フロッピーデスク、ポストイット、プレゼンカード、のり、LANケーブル、眠らない飲み薬、CD-R、ティッシュ、レポートカバー。
・1日利用のロッカー。
・地下1階扱いではあるが、事実上地上階で、中庭あり。採光は充分。
・テーブル・イスのスタイルや、パーティションの有無にバリエーションがある。←これ、大事。
・ソファ類など、たくさんの什器類を寄付金によってまかなうことができた。
・Learning Commonsスペース全体の3割ほどは、まだ何もおかれていなかったり、以前のままの閲覧席が置かれたりしている。今後(来年等)改装がさらに行なわれる予定で、待ちの状態である。

 (PC)

・図書館が管理するPublicPCと、学内IT部署が管理する学内教育用PCとがある。すべてMicrosoftOfficeが入っている。
・Learning CommonsにこのPCが入ってくれてから、館内の通常閲覧スペースにもOfficeなど搭載の新しいPCが一斉に設置された。
・何台かはMac。←これ、大事。
・学内学生であっても、OITPCよりPublicPCのほうがよく使われている。
・Officeはマイクロソフトから提供してもらった。
・貸出用ノートPC24台(4時間)。(この1年で8台増設)

(利用実態)

・平日・木曜の19時で、PC席はほぼすべて埋まっている状態。金曜・8時でそこそこ人がいる感じ。金曜・11時で、PublicPCは9割方埋まっている状態。
・学内学生であっても、OITPCよりPublicPCのほうがよく使われている。
・学生の利用の多くは、勉強しているか、本なり論文なりを読んでいるか、PCをいじっているか。1人か、2〜3人か。話はしているが、しゃべって遊んでる感じではない。
・統計をとると、早朝であっても相応の数の学生が来館している。
・プリンタを持っていないので、プリントするために使う(院生)
・部屋だとベッドでガチ寝してしまうけど、図書館だと机の居眠りだけで済む。(院生)
・グループ学習で使う。
・Learning Commonsで勉強していても、参考図書を使うため、結局書架に本を探しに行くことが多い。(院生)
・閲覧室(東アジア参考図書閲覧室)のほうが静かで落ち着ける。(院生)
・「にぎやかで集中できない」

 (支援サービス)

・Writing CenterはUniversity Writing Programの一部である。
・学部生スタッフは1年間の「Tutoring Writing」クラスを受講しており、ライティングのチューターとしてのスキルを得ている。
・以前はStudent Unionにあった。
・レファレンス・デスクのスタッフで夜のシフトの人は、18−24時のパートタイムの人。
・Technology Services:IT部署のHelp deskスタッフの出張による。

 (その他)

・学生スタッフを雇うという件に関してなんだけど、そもそも学内のありとあらゆるところで、学生スタッフがアルバイトで仕事をしている。図書館やラーニングコモンズだけでなく、売店、巡回バスの運転など。
・このLearning Commons以外で学生が勉強できそうなところといえば、学内の食堂、StudentUnion、寮、閲覧席。喫茶店などがある街の中心部は歩いて20分ほどのところで、小さい街なので、数もそれほど多くない。ハーバードにおけるハーバードスクエアや、京大における百万遍とかではない。学生25000人+他大学生をまかなえるような規模の街ではない。→Learning Commonsの成功は約束されていたようなもの。
・LCの計画が持ち上がったとき、カフェ設置も含めて、図書館員や古い先生からの反対もあった。しかし、あまりにも成功したため、その反対はなくなった。
・LCができてから、学生からの図書館・大学に対する評価が上がった。

・Procrastination Cafe
・Library Coffee Cup:倒れてもこぼれにくい構造になっている。このカップを持参すればコーヒーは割引(99セント)である。

posted by egamihvu at 08:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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