2007年10月24日

もうひとつの保存部署・Weissman Preservation CenterのLabに行ってみたよ。


 
 ハーバードの図書館には資料保存を担う部署が2つあって、ひとつは”貸出用一般図書”の補修・保管を旨とする「Harvard College Library Preservation Department」であり、もうひとつは”貴重資料”の補修・保全を旨とする「Weissman Preservation Center」であるのですけど、前者はこないだご報告しましたね、ちょっとテンション上がってる感じで(笑)。で、今回は、後者のほう、貴重資料をお取り扱いになるWeissman Preservation CenterのほうのConservation Labを拝見させていただきにあがりましたよ。

http://preserve.harvard.edu/wpc/
http://preserve.harvard.edu/conservation/specialcollections.html

 そこへうかがった経緯なんですけど、まず、ここイェンチンさんがとある大正時代の有名な人の画集資料を持っていたと。その資料はオリジナルから紙ケース入りなんだけど、その紙ケースから資料本体を出してみると、その本体の表紙が汚く茶色に変色してしまっている、と。その変色具合は明らかで、表に貼ってある札をぱらっとめくって見ると、その下はきれいなベージュ色のままで、そのコントラストの明らかさたるや、ちょっとした事件ですよ。それで、これはどうにかしたほうがよかろうと。ただの本ならまだしも、有名な人の画集なんだし、というので、このWeissman Preservation CenterのPaper専門のConservatorの人にコンサルティングをお願いした、というわけですよ。

 このWeissman Preservation CenterのLabには、「Rare Book」のConservatorたるスタッフ班と、「Paper」のConservatorたるスタッフ班と、「Photograph」のConservatorたるスタッフ班の、3種の専門家がいらっしゃって、今回の場合は「Paper」のConservatorの人にお願いすることになったわけなんですけど、このLabにお願いすると、
 ・出張で資料現物なり蔵書全体なり配架環境なりを見て、これはいまこういう状態だからこうすべきだ、というアドバイスをしてくださる。
 ・資料現物をLabに持ち込んで、いろいろと目視なり化学的方法なりなんなりの検査をやってくださって、その資料に対してどのような補修・処置を施すのが適切かということを、文書で報告・提案してくださる。
 ・もしくは、デジタル化撮影を行なうにあたって、その資料/蔵書がその撮影なりスキャンなりに耐えうるのかどうかをチェックしてくださる。
 ・報告・提案のごとくに補修・処置をやってくださる。
 ・返却時にも、どのような処置をどうやって結果どうだったか的な報告書をつけてくださる。
 ・保管場所、保管方法、箱なりフォルダなりケースなり封筒なりのふさわしいのはどんなのかなどをアドバイスしてくださる。
 ・以上のことを、まあ当然のことながら、すべて無料でやってくださる。

 ね、さすがですね、プロはね。

 で、まずは出張でおいでになって、現物である画集をごらんになったPaper Conservatorの人が、じゃあこれはうちのLabでさらに詳しく検査をして、どのような処置を施すべきかについて検討しましょう、ということになって、じゃあこれは今度江上がそちらのLabに持って行きますので、そのときついでにそのLabの見学をさせてください、という塩梅で、今日に至ったという感じなのですよ。

 とはいえ、例によって英語の弱い江上は、言葉の壁は予習でカバーとばかりに、前日みっちり予習していったわけなんですけども、その予習で学んだことと、それから当日学んだことの、あれこれ。

・このLabは2006年5月に新築された現在の建物に移動したばかり。まだ施設がかなり新しい。
・このLabは、(ちょっと驚いたことに)全面ガラス張り。北向きだから日光は直接当たらないものの、これって大丈夫なの?とちょっと思ってしまう。でも、おかげで自然な光の中で仕事ができてる様子は、まあうらやましいといえばうらやましい。天窓があって、そこには自動開閉するブラインドがついていて、そのときの明るさをセンサーで感知しては、ちょうどいい光量が室内に入るよう、イッツ・オートマチックにブラインドの角度を変えてくれるらしい。
・資料保存系の人にはおなじみの、カビ等除去用のバキューム台。これが、この室内にあるだけでなく、地下にももう1台あって、地下のはカビや劣化した革装の粉を吸い取るのに使う。ここでそれをやってまわりにひろがっちゃったりしないように。
・真新しいマイクロスコープが複数台ある。
・えっと、ていうかね、どんだけ金あるんすか、ここ。と思って「ユーアーソーリッチ」と言ってみたところ、にこっとお笑いになって、いみじくも”It's Harvard.”とのたもうたよ。わかったよ(笑)。
・で、預かった資料を補修する前に、補修前の状態を記録するという意味で、写真撮影をするらしい。ここでおっしゃったのが、デジタルカメラで撮影することもあるにはあるんだけど、原則としてすべてスライドに撮影する、とおっしゃる。←この姿勢、要チェック。
・あと、貴重資料じゃなくて一般貸出用資料であったとしても、同じこの建物内で行なっているデジタル化のための撮影・スキャンに耐え得ないと判断されたものについては、その補修なり処置なりを行なってくださる。(一見、そりゃそうだろうと思えるのだけど、これが日本だと「それは一般図書だから、うちじゃなくてHCLのほうに持ってってください」とかお寒いことを言われそうな気がする。)
・その他の事業:展示方法についての(資料保存の観点からの)アドバイス。報告書・ガイドラインの作成。教育・研修プログラム。出張研修あり。24時間緊急ホットラインへの対応・準備。各館所蔵環境の査定。環境モニタリングのためのプラン・機器のアドバイス。デジタル化やリフォーマッティングへの寄与。
・”Weissman Preservation Center (WPC) Library”というのがあって、資料保存に関する図書・ドキュメント・記事類をコレクションしておられて、ハーバードの図書館関係者に供しておられる、ていう活動。◎。

 あと、写真のほうのグループなんだけど、ペーパーやブックとちがって、なんとなく謎が多い。ていうと人聞きが悪いですね、なんとなくもっと詳しく知りたいことが多いのですよ。ここでカタロギングをやっている、ていうこととか。写真のカタロガーがいて(ていう話も以前ちょっと()しましたですね)、各館でどのように写真をカタロギングしていけばよいかの相談に応じてくれるし、実際にカタロギングそのものも行なってくれる、とか。いまやっているその写真の事業は、とある基金による5年プランである、とか。Webサイトでハーバード学内のあらゆるところに所蔵されている写真資料を一手に把握できるディレクトリを作ってたりして、おおっ、いいじゃないですか、いったいどういう意図で、何を目指して、ていうかどういう想いでそれを構築しておられるのか、とかちょっと聞いてみたいよ。ていうのがいろいろあるんだけど、今回案内してくださった方は基本Paperの人だったので、そういうのはまたあらためて担当者に聞いてみる必要があるなというあれでしたよ。

 以上です。
 それぞれの機器・設備的なことよりも、相談にのってくれる、アドバイスしてくれる、という頼りになる存在としておいでになるということとか、”Library”のこととかが、見るべきポイントだな、と思うた。あと写真のいくつか。

 
posted by egamihvu at 09:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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