2007年09月25日

結論:「オリエンテーション、いらんな(笑)」

 
 ハーバードはすっかり新学期ですよ。

 というわけで、あちこちで、いろんな人を対象に行なわれていた、あれこれのオリエンテーションに、それぞれこっそりと参加・見聞してきたのですよ。

・GSASオリエンテーション (9/12午後)
 HCL(Harvard College Libraries)による院生用のオリエンテーション。(GSASはGraduate School of Arts and Sciencesの略。) 図書館以外の全種のオリエンテーションと同じ建物内で行なわれる。ガイダンスが2回、1時間づつ。1回の参加者は50〜60人ほど。

・Lamontフレッシュマン・オープンハウス (9/13午後)
 Lamont図書館(学部生用学習図書館)による、学部新入生用のイベント。館内の簡単なツアーのほか、各種資料の配布と説明が行なわれる。館内は風船で飾られ、スタッフは皆”You@Lamont”と書かれたおそろいのTシャツを着て、参加者にはスナックやドリンク、USBメモリがあたるチケットを配るなど、お祭り色が強い。ただ、学生の姿があまり見られなく、なんとなく閑散としている。配布資料は、HOLLISの使い方、図書館のディープな使い方、本をCriticalに読むための方法など。
 http://lamontnews-list.blogspot.com/

・Widener図書館ツアー (毎日午後)
 通常は木曜日午後3時からのみの館内ツアーを、この時期に限り、毎日行なうというもの。複数回参加する機会を得たのだけど、ツアーする人によって、30分で終わることもあれば1時間を楽々越えることもある。内容も、必要なことだけにしぼって簡潔に伝える人もいれば、HOLLISの使い方からGoogleBooksの説明、さらにはその本を実際に書庫に探しに行くというかたちをとって、書庫の構成、請求記号体系、集密書架の使い方までもをつぶさに説明するという人もいる。日によって10人以上の参加者があることもあれば、誰も来なくて流れることもあるらしい。

・イェンチン図書館のオリエンテーション (9/12午後)
 学内各所から、東アジア研究を行なっている研究者・学生が約100人参加。なぜか東アジア系の人たちばっかり。全館の概説のあと、日・中・韓それぞれにわかれての館内ツアー。

・イェンチン図書館のオリエンテーション詳細版 (9/13・9/14)
 今年初の試みとして行なわれたもの。学内コンピュータ環境の概説、HOLLISの詳細な利用方法(CJK文字やローマ字の説明含む)、e-research Portalでの各種データベースやRefworksの利用法などを解説する。1回につき20人ほどが参加。

 さて、この中から、1件目の「GSASオリエンテーション」についてちょっとつぶさに報告してみると。

 これは図書館のだけではなくて、何から何までの全体的なオリエンテーションがひとつの建物の中で行なわれてて、クーポンと引き換えにアイスキャンデーとドリンクをあげますよとか、ルーレットで商品があたりますよとか、抽選でiPodがあたりますよとかおっしゃってる喧騒の中で、各部署(住居の部署とか保険の部署とか銀行や車の相談とかもろもろ)がデスクをずらりと並べて、必要な人が必要な部署へ出向いて必要な情報を仕入れに行く、という感じの行事。事務連絡のためのオリエンテーションというより、フェスティバル的な感じ。

 で、その建物の中の1室を使って、1時半からと3時からの計2回、1時間づつ、HCL(Harvard College Libraries)の図書館全体についての概要的な説明をしますよ、というオリエンテーションを行なうわけなのですが、部屋自体はそんなに広いわけじゃなくて、座席も50人から60人、立ち見で80人が入れる程度かなあ。それで2回公演でしょ。とてもじゃないけど、全院生さんに必須な情報をあまねく伝える、という意味でのオリエンテーションではないよね、ごく一部の興味のある人になんとなく存在を伝えるという感じでしか機能しなさそうに、”一見”思える。
 で、会が始まると、まずHCLの旗艦たるWidnerのライブラリアンの人が概説しはって、次にScienceの図書館の人、Geospatialの図書館の人、といった具合にHCL内の各図書館の人らがかわるがわるに概説をなさる。んー、それってどうなんだろう、と思う、学内にいろんな図書館があるんだなというのがわかるのはいいんだけど、ぜんぜん分野の違う図書館についての説明を全部が全部ひとつづつ見せてって、各々の院生さんの益に立つだろうか、と。しかもその内容も、Widnerの人はOPAC→Google→GoogleBookといったような検索のひととおりの解説をしたかと思えば、Geospatialの人は古地図のデジタル画像を披露といったものだし、Scienceの人に至っては”研究者としての情報への取り組み方への心得”みたいなおもっきし根源的な話題を力説してはって、どうも一貫性がないというか、それぞれがそれぞれで持ち寄ったものをただ集めただけ、というようなプレゼンに見えてしょうがない感じになってきてる。それでいて、うち(イェンチン)からもレファレンスライブラリアンの人が来てはいるんだけど、その人がプレゼンなさる様子はどうもない。
 そんなんで、あれぇー、こんな感じなんだ、とちょっと拍子抜けしたところで最後に、各部局図書室からここに来てるライブラリアンの人が部屋の壁際にずらっと立ち見で並んでるので、そのライブラリアンの人たちにひとりひとり自己紹介してもらいましょう、ていうターンになって、端から二言三言の挨拶をしていく感じになる。人によっては自分の専門分野を詳しく説明したり、自分は何々のハンドアウトを今日持ってきてます、ていう感じで、全員、5分くらいで終了。で、じゃあ今日は解散です、ということになる。

 ・・・・・・・・・ここからでしたね、この会の白眉はね。

 7割くらいの院生さんはざわざわとお帰りになるのだけど、3割くらいの方はお帰りになるわけではなくて、例えば2・3人の院生さんがすぅ〜っとイェンチンのレファレンスライブラリアンの人のところに近寄ってきて、”Hi!私は誰それで、○○の勉強を・・・・・・、○○を探したりして・・・・・・”、”Hi!じゃあこういうデータベースがあって・・・・・・、これが私の名刺でいつも何曜日に・・・・・・”。

 あ、これか、と。これでしたね、最重要ポイントは。こうやって院生さん自らが、自分にとって益になりそうな種類のライブラリアンを見つけ出しては、コンタクトをとって、今後も随時相談にのってもらえるように顔つなぎをしていく、ていう。これってだからあれですよね、レファレンスという図書館サービスが、”制度”として用意されてるのではなくて、”コミュニケーション”という至極当然の社会性の上にのっかってるという様を、江上はいま目の当たりに見てるわけなんですよね。しかもそのコミュニケーションを築こうとアプローチしていくのが院生さん側自身のほうであり、そうやって自分自身に必要な情報や有益な交際関係は自ら能動的に獲得しに行く、というひとつの”マナー”(註:礼儀という意味のマナーではなくて)が大前提としてここには存在していますよね。もちろんライブラリアン側だって受身なわけがなくて、そうやってアプローチしてくれる人を逃さぬよう、あるいはもっと増えてくれるよう、ハンドアウトを抜かりなく用意したり、自己アピールをしたり、積極的に話しかけたり、それ以前にしっかり広報活動を行なってたりということを、まあやるわけですね。

 で、帰ってあらためてこのオリエンテーションについての事務連絡メールを読み返してみたら、確かに、こう書いてありますもの。
 ”students will learn practical information and the names of librarians who will be useful contacts for them”
 そしてそういえば、Lamontの学部生用オープンハウスのポスターには「MEET OUR STAFF」と目立つように太字で書いてあったな。

 例えば日本の大学図書館での新学期オリエンテーションとかだと、なんとかして参加必須化して、必要最小限もしくは最大限の基本事項を、漏れなく、あまねく、伝達させたい、という方向の議論になりますよね。
 確かにこちらさんでも、その方向の議論はされてるのかもしれない、よその大学さんでは全員出席必須のオリテを実施してるのかもしれない、ハーバードさんだってそっちがいいけどなかなかできなくて、と悩んではるのかもしれない、わかんないけど。そうでなくても、広報に苦慮した末のなりふりかまわず感は、必死になって来館者にチョコやキャンディーを配ったり、スタンプラリーゲームをやってたり(註:このあたりどうも、アメリカ人が俄然お子ちゃまっぽく見えてしまう)、映画のタダ券やデジカメやiPodが当たるなんてゆってみたりしてるところからも、よくわかる。

 ただ、”私の分野は何々です、いつもはどこどこにいます、今日はこんなハンドアウトを持ってきてます”と積極的にアピるライブラリアンと、自分に有益そうなライブラリアンのもとへ自ら足を向けて話しかける院生さんとが、その場で即座に関係性を結んでいくという現場をこの目で見ちゃったりなんかすると。

 ・・・・・・・・・んー、正直、その手の議論ってどうでもよいかな、て思えてきちゃうなあ(笑)。
 「何事によらず、モノは、自ら得るものではなくて、与えられる。等しく、漏れなく、あまねく。だから、全員出席、必須です。」
 ていうのはやはりどうも、日本人的な感覚っていうことなのかなあ。

 だって別に全員参加にしなくったって、今日ここに来てなくったって、オリエンテーションの時期が過ぎて10月だの11月だのになったって。互いに相応のコミュニケーション・スキルさえあれば、”私は○○分野の学生で○○を探しています””私は○○専門のライブラリアンで○○にいます”ていうお二人が関係性を築いて、サービスが受け渡されていく、なんてこと、いつでもどこでも至極簡単に成立しちゃうもの。
 ていうか、実際、別口でハーバードのロー・ライブラリーの館内をそこの日本人司書の人に案内してもらってたとき、たまたまそこの研究生の人とすれちがって、「この前の○○はどうでした?」「そのことでまたちょっと相談したいんですけど」「じゃあ今度○日の○時に」なんつって、さらっとレファレンス相談の約束をとりつけたりなんかしちゃってる様(註:なんでもないようなことなのに、かっこいい〜と魅了されてしまった(笑))を見たりしたし。
 イェンチン図書館のオリエンテーション(縮小版)でも、日本研究の利用者相手2人だけに館内ツアーをしたときには、”専門テーマは?”というようなインタビューをまずしてから、それに見合うような蔵書のレビューをしてったりしてたし、それどころか”クラスではどんなことをしている?”というような取材もしておられたし。

 うん、やっぱり、レファレンスっていうサービスは”制度”の問題じゃなくて”コミュニケーション”の問題なんじゃなかろうか、と。
 オリエンテーションは”コミュニケーションの場”である、と。

 だったら、年度始めのオリエンテーションなんてまあひとつのきっかけでしかなくって、年がら年中いつだって、利用者とライブラリアンとが向き合えば、そこが即ち”コミュニケーションの場”になる、と。

 まあ、そういうことですな。




 これ、下手したら、オリエンテーションいらんな(笑)。


 さあ、この記事をどう「日記」に改稿しようか(難)。
posted by egamihvu at 07:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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